妻の老後の面倒を見なければならないという遺言は有効?

●法定遺言事項以外の遺言

法律上遺言できることは限られていますが、老後の面倒を誰が見るかということは法定遺言事項ではないので、これを記載したとしても法的な効力はありません。

記載するのがダメなわけではなく、遺言者の気持ちを伝えることも遺言書の重要な役割となります。


●負担付遺贈

上記の記載内容を実現するためには、負担付遺贈の方式をとることによって、事実上の強制力を持たせることは可能です。

負担付遺贈とは、相続財産を受け取る者(相続人ではない受遺者)に一定の法律上の義務を課す遺贈のことです。(同じ考え方として、相続人に対する負担付相続をさせる遺言も可能です。)


例えば、妻の弟に妻の老後の世話をしてもらうこととして、そのために遺言者名義の預金を全部妻の弟に遺贈することとした場合、

「妻の弟に全預金を遺贈することの負担として、妻が死亡するまで、生活費として妻に5万円を支払うとともに、妻を扶養しなければならない。」などと遺言書で定めることができます。

この場合、妻の弟には妻に毎月5万円を支払うとともに妻を扶養する義務が生じ、この義務を怠った場合は、相続人(今回の例で長男とする)の請求により、遺贈が取り消される可能性が生じます。

このように、妻の面倒をみなければ遺贈が取り消されてしまうペナルティがありますので、妻の弟が妻の面倒をみることについて事実上の強制力を期待できます。


② 負担付遺贈は、負担の内容を可能な限り具体的にしておくことが必要です。

例えば、義務の内容を単に「妻の面倒をみること」と抽象的に記載すると、「施設に入れることは面倒をみてることになるのか」という論争になってしまいますので注意が必要です。

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